※これは2003年に行われた企画です。現在はこのような企画は行っておりません。

ゴキブリのからだ


 ゴキブリも他の昆虫と同様に、体の外側はキチン質の硬い殻に覆われていて、「頭部」、「胸部」、「腹部」の3つの部分から成り、肢は6本ある。 この写真のゴキブリは、雄のゴキブリです。 ゴキブリの雌雄の見分けかたは、腹部の節の数が7対ならば雌。9対あれば雄と言われている。しかし、一般人にとっては体の節を数えるよりも、おしりの先端部分を見たほうが分かりやすいだろう。 雌の場合には、卵(卵鞘)を抱えるための産卵管を見ることが出来る。 また、体つきは雄の方が雌よりもスマートなことも判断材料になるだろう。 慣れてくると、見ただけで雌雄の区別どころか、ゴキちゃんにつけた個別の名前まで分かるようになってくる。
 ここまで来ると、ただの変人である。



これは、ゴキブリを縦にスライスして染色したものである。

ゴキブリは何を食べる?
 昆虫は食べるものによって、植物食性・動物食性・雑食性の3つの種類に大きく分けることができます。昆虫の半分以上が植物性ですが、ゴキブリは雑食性。いろいろなものを食べます。わたしたち人間の食べられるものはもちろん、腐った植物・生ゴミ・動物の死骸などもOK。また、人間のつめ、髪の毛なども食べることができます。爪や髪の毛はタンパク質でできているので、持ってこいのタンパク源!?う〜ん、ちょっと気持ち悪いかも… 排泄物も食べますし、排水口など汚いところを歩くので不衛生で、病原体の媒介という問題があることは否めません。だから屋内害虫とされています。
 なんでも食べるといっても、食べ物が豊富にあるときは好きな食べ物を選びます。ゴキブリはパン、ふかしたジャガイモ、米ぬか、バナナ、バター、食用油などを好みます。タマネギのにおいは好きですが、実際好んでいるわけではないようです。
 ゴキブリはもともと森にすんでいました。台所にだけいる昆虫ではありません。暖かい地方(日本では九州以南)では森にも住んでいます。森のゴキブリは朽ち木を食べます。現在本州、はたまた北海道までの屋内に生息地を広げているのは、暖房設備が整い、ゴキブリにとってちょうど良い湿度が保たれて、しかも食物が豊富なためです。
 幼虫と成虫で食べるものが違う昆虫も多々ありますが、ゴキブリは幼虫も成虫と同じものを食べて立派に育ちます。

ゴキブリはどんな栄養が必要?
 ゴキブリに限らず、昆虫はどれも共通して5種類の栄養素、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルが必要です。これは、私たちヒトもまったく同じです。それから、ヒトには必要ないのですがコレステロールが昆虫には必要です。タンパク質は20種類のアミノ酸からできていますが、このうち10種類が不可欠アミノ酸といって体内で合成することができないので食べ物から摂取しなければなりません。これは成長期のヒトと共通です。

どうやって消化している?
 ゴキブリはあごがよく発達しています。前から大顎、小顎とあり、大顎には強大な歯と臼歯部があります。そのため、木などの硬いものでも食べることができます。このあごと歯で咀嚼(もぐもぐかんで細かくする)をするのです。その奥にヒトの口のような空洞があり、その中央には唾液(消化を助け、食物の運びを滑らかにする液)のでる舌があります。

 もっと奥へ進んでみましょう。

 ゴキブリが食べたものは口・食道・そのう・前胃・中腸・後腸を通って消化されます。そ嚢は単純な袋状のものです。前胃の内面には6列の歯、その裏に小さい歯が並び、ここで再びよく咀嚼が行われます。咀嚼された食物はそ嚢に戻って消化液と混ぜられます。消化が進むと中腸へ送られます。中腸には排泄物を体外に出すマルピーギ官という器官が枝分かれしています。中腸の次の後腸は長く、そこには共生微生物がすんでいます。木や植物はセルロースという成分からできているのですが、そのセルロースをこの微生物が糖に変えてくれます。ゴキブリはこの微生物がいないと糖が作り出せなくなってしまい、やがて死んでしまうのです。

これが、ゴキブリの胃の断面


歯の周辺を拡大してみると・・・
 

ゴキブリの腸の断面



いらないものは排出
 タンパク質は不可欠ですが、消化するとアンモニアという生物に有害な物質もできてしまいます。人間も尿を出しますよね。昆虫は尿酸というかたまりにできるので水分を節約することができます。水分は生き物にとってなくてはならないもの。人間は食べ物がなくても1ヶ月は生きられるといいますが、水がないと3日持たないといわれます。

栄養の貯蓄
 「ゴキブリはヒトが絶滅しても生き延びる」と言われます。そのひとつになんでも食べるということがあげられます。それからもうひとつ、栄養の貯蔵がすぐれていることもあげられます。食物を消化し、あまった分はからだの様々なところにある脂肪体という組織に貯蔵されます。ゴキブリはこれが良く発達しています。大量のエネルギーがが貯蓄できるため、ある程度の期間水さえあれば食べ物なしで生きてゆけます。

ゴキブリを食べる?
 ゴキブリを食用または薬用にする習慣は古くから世界各地で知られいます。ゴキブリの体を調理して食べ、または卵比を集めてフライにするなど、これらは熱帯地方だけでなく、イギリスあたりでも食用の記録があります。中国では古くから薬の中に、日本ではゴキブリを霜焼け、雪焼け、驚風(子どもの脳膜炎)、風邪、胃腸病、夜尿症の薬としていました。漢方薬にもゴキブリを用いる処方があります。ロシアでは水腫(すいしゆ)の薬とされ、またアメリカ南部、ペルー、ジャマイカなど世界各地でゴキブリを薬用にすることが知られています。ゴキブリに関する迷信もやはり世界各地にあり、吉、凶の両方を含み、ゴキブリが家の中を走り回ると嵐がくるというアメリカの言い伝えのように、天気を予知せしめるともいうそうです。また、英米ではリンゴの匂いにはゴキブリを殺す作用があるといわれている。