※これは2003年に行われた企画です。現在はこのような企画は行っておりません。

虫の見る世界 〜のぞいてみよう!台所の裏〜

 ごきぶりのお話をたくさん聞いて気持ちが悪くなってしまった方、もしくはごきぶりワールドにすっかりはまってしまった方、いろいろいらっしゃると思いますがちょっと私のお話も聞いていって下さい。
 台所のむしの代表選手はごきぶりですが、ほかにもハエや、アリなども有名です。台所の窓を開けてみれば、外にはチョウチョやハチなんかが見えたりするかもしれません。さて、私たちは顔にある目玉でそのむしや景色をみていますが、むしには私たちのような目玉はついてないですよね(想像したらちょっと気持ち悪いですね)。そういったむしたちは私たちとはずいぶんと形の違う眼をもっています。そんなむしたちからみたせかいはどんな感じなのでしょうか?私たちがみている世界とはちがうの?!・・そんなこと考えてみたことありますか? 実は実は、「世界はひとつ」じゃないんですよ〜


昆虫の目
←これは何でしょう・・?
 実はこれはハエの目を電子顕微鏡でみたものなのです。昆虫の目は「複眼」と呼ばれています。複眼は「個眼」というマッチ棒のような長細い「目」がたくさん集まってドーム状の形になっています。写真のつぶつぶしている「つぶ」の1つが個眼です。個眼には光を一点に集める「角膜」や、入ってきた光を脳に伝える「情報」に変換する「視細胞」がそれぞれあります。くわしく書くと長いので今は省略して・・。一般的に1つの個眼で1つの点を見ています。個眼は複眼の「画素」の1つだと考えたらわかりやすいでしょうか?例えばハエ(ショウジョウバエ)なら800個、チョウチョ(ナミアゲハ)は1万個の個眼をもっているのでハエは800画素、チョウチョは1万画素。といったところです。イメージとしてはそんなかんじです。(そんな単純ではないですけど・・)

虫の視力
 ここからは複眼の能力のおはなしです。まずは遠くのものをどれくらいシャープにみえるか。という能力について。つまり人間で言うと「視力」です。健康診断ではかるアレです。結論から言ってしまうと、虫の視力は0.1にも満たないのです。一番上の「C」もみえないくらいなのです。そもそも視力とは「2点を選別できる最小の角度」のことなのですが、ヒトの平均が0.01°だとすると、ミツバチは1°、ハエは4°・・なのです。例えば最小角度が2°の複眼だと、50p先の1円玉の模様が判別できないくらいの視力になります。

虫の動体視力
 次に速く動いているものをどれくらい正確にみえるのか。という能力について。これは光の点滅を点滅として見分けられるぎりぎりの点滅頻度(Hz)で表します。例えばヒトは30〜40Hz(cycle/sec)という値です。これ以上点滅頻度が速いとずっと光っているようにしか見えなくなります。さて、では虫はどうかというと・・ハチで200〜300Hz、ハエは140Hz・・という結果です。
 分かりやすく言うと、ヒトは野球のボールが飛んでくるのは見えますが、ピストルの弾が飛んでくるのは速すぎて見えません。ところが虫は野球のボールはもちろん、ピストルの弾までしっかりと見ることができるのです!!
 視力は悪いけど、動体視力はすごい!・・うーん、ここまででももうすでに虫とヒトでは見てる世界がだいぶ違うようです・・。どんなふうにみえるのか・・ちょっとイメージしにくいですねえ・・。

虫の色覚
 その名の通り、色をみる能力についてです。知っている方も多いと思いますが、ヒトは赤、青、緑を感じる3種類の視細胞を持っています。その3種類の細胞の興奮の強さによって感じる色が違うのです(光の3原色)。例えば3つが同じ強さで興奮すると白に感じます。赤と青が強くて、緑が弱いと紫に感じる・・という感じです。
では虫はというと・・例えばハチやハエなどは紫外線、青、緑を感じる3種類の視細胞をもっています。赤の代わりに紫外線!いったいどんな色をみているのでしょう?例えば、ヒトが「白」と感じるもの(つまり可視光をすべて反射しているもの)は、これらの虫から見ると2通りに見えます。

1, 白(その物体が紫外線と可視光すべてを反射している場合)
2, ヒトが感じることのできない未知の色(可視光はすべて反射するが紫外線はある程度吸収している場合)

 これはちょっと驚きではないですか?私たちが「白」と思ってたものは実はほんとのほんとは「白」ではないんです。みる者によって違うのです。

偏光視
 まず「偏光」とはどんなものなのでしょうか?光には「波」の性質があります。光の波は横波です。例えば太陽などの自然光はあらゆる振動面の光を含んでいますが、それが物にあたって反射した光はある限られた振動面を持つ光になります。このように振動面が決まっている光を「偏光」といいます。私たちの身の回りには偏光がたくさんあります。(例えば海の水面がギラギラ光って見えますよねあの光も偏光です)しかし、人間には光の振動面を見分ける能力がないのでどの光も同じように見えます。
 ところが、虫には偏光を見る能力があるのです。例えばミツバチは青空にある偏光を利用して、迷子にならずに自分の巣に帰ることができます。
 私たちも「偏光板」という道具を使って身の回りにある偏光を見ることができます。よく釣りをする人がかける「偏光めがね」のレンズ部分と同じです。虫に見えて、人間には見えないもの、体験してみましょう!

〜台所で見つけた偏光〜
サンマの体を見てみよう。
普通と変わりません。 暗くなりました。

 左の写真は偏光板によって振動面が0°の光だけ通らないようにしています。右の写真は偏光板によって振動面が45°の光だけ通らないようにしています。暗くなったということは、光が偏光板によって遮られたということです。
 このことから、サンマの体が反射している光には、振動面が0°の光はなく、振動面が45°の光があることが分かります。(左の写真が青く見えるのは、偏光板の性能が悪く、青の波長の光は透過してしまうからです。)