@秘密は“気化熱”にあり
注射を打つ時に、アルコールを含ませた綿で腕などを
ふくとヒヤッと冷たく感じますよね。あれは液体のア
ルコールが気体に変わる時に、腕の熱を奪っているた
めです。このように液体から気体に変わる際に奪われ
る熱のことを、気化熱と呼びます。
冷蔵庫の基本的な仕組みもこれと同じで、食べ物を入
れた箱の中の熱を、気化熱で奪って冷やし、熱を外へ
出しています。
Aどうやって気化熱を起こすの?
冷蔵庫の仕組みにとって最も重要な物が「冷媒」です。
密閉したパイプの中にある冷媒を圧縮器(コンプレッサ
ー)により圧縮します。この時、発熱するので、冷蔵庫
の背面にある放熱器で放熱します。そして、圧縮され、
高圧になった冷媒ガスは液体になります。液体になった
冷媒は冷却器で気化されます。その時に、周囲から気化
熱を奪いとります。ちなみに、冷凍室が一番冷たいのは、
冷媒を気化させる装置のエバポレーターに一番近いから
です。これを循環して行っているのが、冷蔵庫の仕組みです。
@大昔の冷蔵庫、氷室
ずっと昔、氷室が冷蔵庫の変りに使われていました。
涼しい山の穴倉や、倉庫のような部屋のことで、おが
くずやわらで包んだ雪や氷を入れて、夏まで保存して
いました。氷室は、今から1500年ぐらい前の奈良時代
に、既に使われていました。氷室の雪や氷は、夏にな
ってから取り出され、水やお酒を冷やすのに使われま
した。氷を削ってかき氷のようにして、食べることも
ありました。
氷室に入れる雪や氷は、冬の間にたくさん集めたり、
高い山に夏まで残っている雪や氷を運んできたりした
もので、大変な手間や苦労がかかっていました。雪や
氷を使った冷たい物は、身分の高い人でないと味わえ
ないぜいたくなもので、ごく普通の人たちが口にする
ことはできませんでした。
A氷を使う冷蔵庫
日本で初めて電気冷蔵庫が発売されたのは、1930年(昭
和5年)になります。当時の電気冷蔵庫は、とても値段が
高く、なんと、家1軒の値段と同じぐらい高かったとも
言われています。
そのころ、電気冷蔵庫の代わりに、氷を入れて使う冷蔵庫が使わ
れていました。そして、氷は氷屋さんで買っていたのです。氷が
作れる、冷凍室付きの冷蔵庫が発売されたのは1963年(昭和38年)
のことで、昔は氷をお店で買うのが普通でした。
冷蔵庫では冷媒を使って熱を吸い取っていますが、この冷媒に従来、オゾン層を破
壊するフロンが使われていました。モントリオール議定書によりフロンは先進国では
生産が禁止された結果、代わりに代替(だいたい)フロンが使われ始めました。しか
しながら、この代替フロンも、やはりオゾン層を破壊してしまうのです。さらに、代
替フロンは強力な地球温暖化ガスともいわれています。現在では、より環境にやさし
い技術として、グリーンフリーズ技術による冷蔵庫が使われ始めています。これは、
シクロペンタン、イソブタン、プロパンなどの炭化水素類を冷媒としたもので、利点
として、容易に手に入る、代替フロンより安い、効率も良い、地球温暖化への影響も
無視できる程度なことがあげられます。ここで、それぞれの場合の環境影響を比較し
てみましょう。(出典IPCC)
物質名 |
強力な温暖化ガスか? |
オゾン層を破壊するか? |
国際条約の規制対象か? |
大気中の寿命 |
総合判定 |
|
フロン(CFC類) |
YES |
YES |
YES |
50〜1,700年 |
× |
|
代替 |
HCFC類 |
YES |
YES |
YES |
1.4〜19.5年 |
× |
HFC類 |
YES |
NO |
YES |
1.5〜250年 |
× |
|
炭化水素 |
プロパン |
NO |
NO |
NO |
数ケ月 |
○ |
イソブタン |
NO |
NO |
NO |
数週間 |
○ |
|
シクロ |
NO |
NO |
NO |
数週間 |
○ |
参考webページ :探検キッズ http://www.discovery.panasonic.co.jp
グリーンピースジャパン http://www.greenpeace.or.jp/
文責:鈴木康朗