大量生産のしくみ −ものつくりQ&A

Q:ラップはどうやって作るの?

A:家庭用のラップの多くはポリ塩化ビニリデン系合成繊維とよばれる樹脂からできています。
ポリ塩化ビニリデン系合成繊維は加熱に強く、電子レンジで使用することもでき、他の樹脂に比べ
て酸素や水分を通しにくい性質があります。


では、具体的にラップを製造する工程を見てみましょう。

ラップはインフレーション法という工程で製造されます。石油を原料に合成されたポリ塩化ビニ
リデン系合成繊維を炉で加熱して
融解させ、金口からチューブ状に押し出します。同時に空気を吹
き込み、風船のように膨らまして樹脂を膜にします。

            図1 インフレーション法

これを巻き取って両端を切断し、2枚のフィルムにします。これを適当な長さに巻き取れば、ラッ
プが完成します。なお、このインフレーション法はごみ袋の製造などにも用いられています。


最後にラップの原料となるポリ塩化ビニリデン系合成繊維の合成について紹介し
ましょう。まず、石油から得られるエチレンと塩素を反応させ、塩化ビニルをつ
くります。さらに塩素を反応させて、塩化ビニリデンも合成します。そして、塩
化ビニリデンと塩化ビニルを反応させてラップの原料となるポリ塩化ビニリデン
系合成繊維を得ます。この一連の反応を化学反応式で表すと、
 
(1)エチレンの塩素化
   CH2=CH2 + Cl2 CH2(Cl)CH2(Cl) CH2=CHCl + HCl

(2)塩化ビニルの塩素化(触媒:Ca(OH)2
     CH2=CHCl + Cl2 CH2=CCl2 +HCl

(3)共重合
   m
CH2=CCl2 +nCH2=CHCl → −(CH2CCl2)m(CH2CHCl)n

となります。

Q:アルミはどうやってつくるの?

A:缶にはつか種類がありますが、ここでは底と胴体が一枚の板から作られるDI
DrawingIroning缶)と呼ばれるものを紹介します。DI缶はビールや炭酸飲料など
の保存に使用される底がドーム状にへこんだ缶で、1分間に1000個以上という目
にも止まらない速さで生産されます。その工程を見てみましょう。


まず、厚さ0.3mm前後の金属の素板をブランクと呼ばれる円板に打ちきます。この工
程をブランク抜きといいます。


同時にブランクの外側を押さえ、中心部をプレスして浅い円柱(コップのような形)にします。この
工程を
成形といいます。(図2)

図2 絞り成形

               図3 しごき加工

次に、この円柱の直径を小さくする再絞りと、側壁を薄く延ばして高さを2〜3倍に
するしごき
成形を1つの長いストロークで行います。しごき成形は円柱の外側をダイ
(型)押さえ、内側から缶を押し出して円柱の
側壁胴部の薄い部分で0.1mm、上部
0.150.16mmの厚さまで引き延ばします。また、このとき同時に缶の底をドーム状
にへこませます。飲み物を詰めると、缶の内部には強い圧力がかかります。底をドー
ム状にするのは、この圧力に耐えられるようにするためです。


最後に、これまでの工程で塗布された潤滑剤脱脂洗浄によって除去し、内外面に
表面処理、
塗装します。そして缶の飲み口側を狭めて(ネッキング)完成です。
飲み口側を狭めると
が小さくてむので省エネルギー、省資源になります。

蓋は別工程で製造され、内容物を
充填したときに二重で巻締めされます。

こうして作られた缶はたいへん薄く、軽いものとなります。また缶胴部に継ぎ目がなく、内容物が
漏れる心配がありません。また、しごき成形で引き延ばされているため
金属光沢が増し、塗装後も
綺麗
なものになります。

Q:インスタントコーヒーはどうやってつくるの?

A:世界各国で生産されたコーヒー豆は、工場で焙煎、ブレンドされたあと粉砕され
ます。このまま
包装すればレギュラーコーヒーになります。

インスタントコーヒーの場合、粉砕したコーヒー豆をお湯で抽出します。これを乾燥
するのですが、その方法は大きく分けて2通りあります。


噴霧乾燥(スプレードライ)は、抽出したコーヒー液をきで噴射し、熱風を吹き
かけて水分を瞬間的に蒸発させる方法です(図4は乾燥塔のイメージ図)。このよう
にして乾燥したものを包装して製品になります。


一方、凍結乾燥(フリーズドライ)と呼ばれる方法では、コーヒー液を−40℃の冷
凍室で凍らせて、これを真空状態に放置します。すると氷が水蒸気に変化するという
現象(
昇華)がき、水分が取り除かれます。この方法では、氷のあった部分がなく
なるので、インスタントコーヒーの粒が穴だらけのスポンジのような状態になります。
スポンジには水が中まで
みやすいが性質がありますが、このインスタントコー
ヒーにも同じような理由で水に



  参考文献・HP

『もの作り不思議百科−注射針からアルミ箔まで』 JSTP編 コロナ社

『もの作り解体新書』 日刊工業新聞社


AGF Web Site /コーヒー図鑑』 http://www.agf.co.jp/5_hiyaka/5_1_1index.html

『東洋製罐』 http://www.toyo-seikan.co.jp/


    出典

※『Plastic Information Network http://www.pi-jp.net/main04/main04-2/200011.html


                             文責:高坂 泰弘

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