おいしさをはかる 〜謀る〜


おいしさを謀るとは…

 人間は,外部から受け取る情報の7割を,目(視覚)に頼っていると言われています.また,「味覚」と「視覚」,「嗅覚」はおいしさを決定する上で密接に関わっているため,この3つの感覚は「謀る」ことに大きく関係してきます.

 図る,では色の組み合わせによる心理への影響などを見てきました.しかし,スーパーで売っているような食品は,もっとたくさん考えなくてはいけないことがあります.どうしたら食品を美味しくみせられるかということです.ここでは,食品工業とは切っても切れない「添加物」について見ていきましょう!!


添加物ってなんだろう??

ずっと昔から,人々は食べ物の保存や加工をいろいろ工夫してきました.たとえば,肉や魚をくんせいにしたり,塩づけにしたりして,長持ちさせる.それから,植物の実や葉や花を使って,香りをつけたり・・・.梅干に入れるしその葉や,豆腐を作るのに,にがりを使ったり・・・.こんなふうに,食べ物を作ったり,加工したり,保存するときに使う調味料,保存料,着色料などを,まとめて食品添加物といいます.ということは,コーヒー砂糖を入れても添加物といってしまえるのでしょうか・・・?


ハムの色は作られた色!?

ハム
ソーセージの成分表示を見ると「亜硝酸Na(あしょうさんナトリウム)」という聞きなれないモノが入っています(もし家にあったら成分を見てみて下さい..これはハムを美味しく見せるために使われてる「発色剤」の一つです.

 普通の肉は,焼いたりゆでたりすると灰色になってしまいます.これは肉の赤い色の成分“ミオグロビン”が,熱の力で「メトミオグロビン」という物質に変わったからです.亜硝酸Na(あしょうさんなとりうむ)は,「メトミオグロビン」ができるのを防いで,代わりに「ニトロソミオグロビン」とうピンク色の物質をつくります.これが,ハムのピンク色の正体です.

 無添加のハムと,ピンク色のハム,並べてみてどちらがおいしそうに見えますか?多分おおくの人はピンク色のほうが美味しそうに感じると思います.


おいしそうな匂い.でも…

 ガムの包み紙を開けると,ぷ〜〜んとただよういい匂い・・・ 匂いも,美味しさを決定する重要な条件です.

 もしガムに匂いが無かったらどうなるでしょうか?鼻をつまんだままガムを噛んでみましょう.このようにすると匂いを感じにくくなり,何味のガムを噛んでいるか分かる人は,かなり少なくなると思います (これは“味”として認識していると思っていたものが,実は“匂い”を味として認識していると思っているために,鼻をつまむと味がわからなくなります).

 匂いのもとは「香料」と呼ばれていて,これも立派な添加物です.これがないと,あめ玉やガムは多くの種類の商品を作ることはできないでしょう.
 香料はかなり多くの成分からできていますが,成分の割合を変化させるだけで数種類の香りを作ることができます.


食感に関係する添加物

 アンケートの結果を調べていると,予想以上に多くのひとが「食べ物の食感が気になる」と答えていました.それでは,食感をよくする添加物とはいったいなんでしょうか.
 やわらかい食パンに含まれている添加物はイーストフードです.これはパンを膨らませる「発酵」という働きを助け,柔らかいパンを作るために使われます.ライ麦パンは添加物がないと発酵しにくく,硬いパンになります.自然なものだから確かに美味しいけれど,いつもと違うという違和感を感じます.それほどまでに添加物は,私達の生活に浸透していると言えます.



食品添加物の安全性


 食品添加物は,動物実験による様々な安全性試験を通過して普通に食べている分には安全であると認められたものしか使ってはいけないようになっています.

○安全性試験の例

・繰り返し食べさせたときに害はないか?
・次世代への奇形などの影響はないか?
・発がん性はないか?
・アレルギーを発症する可能性はないか?


 これらの結果を検討したなかで,実験動物に毒性の影響を与えない量(最大無毒性量)を求めます.次に,この最大無毒性量から,人が一日にその量以下ならば食べても有害ではない量,一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)を求めます
 人間と実験動物の間の物質に対する感受性の違い,また,個人の間の差を考慮して,動物実験で得られた最大無毒性量に,安全係数(Safety Factor)の1/100をかけて得た値を,安全量とみなします.この安全量を参考に,使用できる食品と使用できる量を決めた使用基準を設定します.例えば日本人が1日に食べている加工食品の中にふくまれる自然界にない人工の添加物の量は,およそ0.1グラムといわれています.(みみかき一杯が約0.5gです.)

 しかし,一度安全であると認められてからも,後に害があると認められて使用禁止になったものもあります.また,添加物だけでは害がないけれど,他のものと反応することで危険な物質を作り出すものもあります.例えば亜硝酸Naは魚に多く含まれる成分(二級アミン)と反応して有害な物質を作ることが知られています.魚の加工品には,亜硝酸Naは入っていません.


添加物は必要か?それとも不必要か?

 これまでに,いろいろな添加物についてみてきたわけでありますが,果たしてこれらの添加物は必要でしょうか,それとも,必要ないでしょうか?

 添加物=危険なものと思い込んでいる人が多いように思いますが,製品を作るうえで絶対に必要なものにも添加物と呼ばれているものがあり,添加物=危険という考え方は必ずしも正しいとはいえません.最近では,パッケージに大きく「無添加」と書いてある商品が多くなってきましたが,保存料の使われていない商品を保存するのは安全と言えるでしょうか?いつも買っている飲み物が,無添加になって「おいしい商品」と「まずい商品」の両方ができてしまったら?商品は売れなくなってしまいます.品質を保つためには,添加物が必要なのです.


 最後に…


このように、必要でもあり、不必要でもある添加物。どれが必要で、どれが本当は必要ないかという情報が、広まっていません。どれもこれも「添加物」という言葉でくくられて、それを見分けるのは個人にまかされているのが現状です。情報社会が発達してきて、家庭にいてもさまざまな情報が得られる時代になりました。もう少し、添加物に興味を持ってみませんか?