セロハンテープのステンドグラスに使う材料は、
あると便利な道具は、
まず、ソフトカードケースを円形に切ります。 このときマジックペンと円定規で、カードケースに切り取り線を引いておくと便利です。
切ったカードケースに、セロハンテープを貼り付けます。このとき、ちょっとしたコツがあります。 まず、下の写真を見てみましょう。これは、セロハンテープを偏光フィルムで挟んだときの写真です。 セロハンテープが 1 枚だけ貼ってある部分には 1 、2 枚重ねて貼ってある部分には 2 と書いてあります。 写真から、セロテープの枚数によって出る色が変わることが分かると思います。
そのためセロテープを何枚も適当に貼った場合、重なり具合が滅茶苦茶になるので、このようにランダムに色が出てきます。 セロハンテープで絵を描きたい場合は、カッターマットにセロハンテープを何枚か重ねて貼り、テンプレートを当てて カッターで星型やハート型にセロハンテープを切り抜くときれいです。ハートの場合、ピンク色を出したければ、 予めセロハンテープを何枚重ねるとピンク色になるのか、いろいろ実験して調べてみてください。
偏光フィルムを、2. と同じ大きさの円形に切ります。偏光フィルムは、はさみで簡単に切れます。 マジックと円定規などで切り取り線をつけて、きれいに切りましょう。これを 2 枚作ります。
偏光板 2 枚を使って、セロハンテープをサンドイッチします。中心にキリで穴を開けて、ワリピンで固定すれば完成です。 完成すると、図のような構造になります。
片方の偏光フィルムを回転させると、色が徐々に変化していきます。 その綺麗さは、中世ヨーロッパのステンドグラスそっくり!
でも、ただのセロハンテープでどうしてこんなに色が出るのでしょうか? ここからは、偏光フィルムを使った実験をしながら、この謎の答えを探していきましょう。
まず、透明なビニールの袋を先ほど使った偏光フィルムで挟んで見ましょう。
セロハンテープの場合と違って、色はほとんど出ていません (半透明なビニール袋では、色が出ることがあります)。 ここで、ビニール袋を、引っ張って伸ばしてみます。伸ばした部分をもう1度、偏光フィルムで挟んでみると、
引っ張った部分に色が出ているのがわかります。
このように、プラスチックやビニールに力を加わると、偏光フィルムで挟んだときに色が出るという性質が あります(この理由はやや難しいので、後で説明することにします)。 セロハンテープは工場で、引っ張りながら芯に巻き取られて作られます。 さきほど紹介した実験では、このときの引っ張りの後を見ていたことになります。
プラスチックに力を加えると、偏光フィルムで挟んだときに色が出る…ここまでの実験で分かったこの事実を利用して、 遊んでみましょう。身の回りにはプラスチックの製品がたくさんあります。例えば、CD のケース。
これを偏光フィルムで挟んでみると、次のようになります。
CD を留める部分は特に色が濃い |
ケースの中央から放射状に色が出る |
まず、左上の写真を見てみると、CD を留める出っ張りの部分の色が濃いことがわかります。CD のケースは、プラスチックを 高温で溶かし、これを型に流し込んで作ります。出っ張りの部分は上から型でプレスして作られますが、 そのプレスの過程で出来た力の跡が、こうして色として見えて来ます。
次に右上の写真。CD ケースの中央から放射状に色が出ています。CD ケ-スは、この中央の点から高温で溶けたプラスチック を流し込んで作られます。このときドロドロのプラスチックが流れ込んだ跡が、色として出てきたというわけです。 このように、身の回りのプラスチック製品を偏光板で挟んでみると、工場で製品が作られた過程を垣間見ることが出来ます。
色が出るしくみについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。 プラスチックは、下の図のような糸状のもの(高分子鎖といいます)が集まって出来ています。
この図で、糸がきれいに並んでいる部分があります(図で水色の部分)。このような部分を「結晶」といいます。 逆に糸が絡まったり、揃っていない部分をアモルファスと呼んでいます(図で黄色の部分)。 結晶の部分は、偏光フィルムで挟むと色が出ます。ところが、アモルファスは偏光フィルムで挟んでも色が出ません。
これは結晶の持つ「複屈折性」と、「光の干渉」という現象で 説明されるのですが、余りにも難しいので割愛します。気になる方は、下の参考文献のサイトを参考にしてください。 なおこの複屈折や干渉から、偏光板を回すと色が変わること、セロハンテープの枚数で色が変わることも説明できます。 ここでは、「結晶」ならば色が出るものとして考えてもらえれば十分です。
ここで、プラスチックを引っ張ったときのことを考えます。
プラスチックを引っ張ると、糸がピンと張って結晶の部分が増えます。 つまり、偏光フィルムで挟んだときに色が出やすくなります。これが、2 で述べた実験の原理です。
なお、プラスチックの種類によっては、最初から結晶が大部分を占める材料もあります。 ビニール袋に使われるポリエチレンのうち、半透明なものはほぼ 100% が結晶で出来ており、引っ張らなくても偏光フィルムで 色が出ます。逆に、ラップなどに使われるポリ塩化ビニリデンや、ソフトカードケースなどに使われるポリ塩化ビニルは、 ほとんどがアモルファスで出来ており、偏光フィルムを使ってもほとんど色が出ません。
2.2 で、CD ケースが作られるときに力がどう加わったのか、偏光フィルムで見ることが出来ました。 「力がどう加わったのか」が見えるということは、「プラスチックの歪み具合」が見えるということです。 偏光フィルムは、このようにプラスチックの歪み具合を調べることができる道具として、実用化されています。
また、透明な結晶に色が付くという性質から、岩石の分析にも用いられます。火山岩などの岩石を分析するとき、 透明な鉱物は目で見てもなかなか確認できません。岩石を薄く研磨して、偏光板で挟むと透明な鉱物にも色が付き、 岩石の中に鉱物がどのように含まれているのかを観察することが出来ます。 このように、偏光フィルムを使った技術は、私たちの見えないところで活躍しています。
(文責:高坂)