人間が認識できる光の色は、下の様に表される。
ところが、人間の目が実際に感じている色は、赤 (Red)・緑 (Green)・青 (Blue) の 3 色だけである(以下、この 3 色を英語の頭文字を取って R, G, B と表す)。 これは、光を感じる視細胞が 3 種類しかないためである 。つまり、RGB 以外の中間の色は、RGB を組み合わせることで認識されていることが分かる。(図 1.2 )
従って、RGB の3色の光を上手く組み合わせると、様々な色が表現できることになる。 この意味で、RGB を光の三原色と呼んでいる。
視細胞はその形状により杵体と錘体に分類されるが、このうち明るいところで作用するのは錘である。
錘には 3 種類あり、S 錐体(Sort 錐体、青錐体)と M 錐体(Middle 錐体、緑錐体)と L 錐体(Long 錐体、赤錐体)に分類される。
これら 3 つの錐体が感じる光の波長は下図の通りで、それぞれ RGB に対応していることが分かる。
パソコンの画面からRGBの3色の光を出して、その3色の光の強弱を調整すると、様々な色が表せる。 デジタルカメラでは、こうしてカラー写真を画面上に表している。
PC の画面も TV も結局は光の3原色を利用している。
会場裏にある 400 インチディスプレイは、R, G, B の 3 色の発光ダイオードが組み合わさって出来ている。
ディスプレイを近くで眺めると、RGB で色を表現していることが分かる。
この事実を証明するために、 OHP フィルムで作ったカラー写真の RGB のフィルタを用意して、バックライトを当てる。
バックライトは白色光、つまり RGB の 3 色が等価に重なったものである。
まず、この白色光は R フィルタを通る。このとき、R フィルタにより GB が吸収され、R の光のみが透過する。R フィルタがない部分では、RGB すべてが透過する。
次に G フィルタである。ここでは、 RB の光が吸収され、G のみが透過できる。最後の B フィルタでは RG の光が吸収され、B のみが透過できる。
こうして 3 つのフィルタを通して生き残った光が、色の原因になる。図 1.4. では、一番上の部分は赤が生き残るから赤く見えるが、その下部分は RGB の光すべてが吸収されてしまうために黒くなる。逆に、一番下の部分はRGBすべてが生き残るため白色になる。
図 1.4. では簡単のために、R フィルタでは GB の光を完全に吸収させた。実際は R フィルタの R の濃さによって、GB が多少透過できる。そのため、RGB の強さを調整して、フルカラーを表現することが可能だ。
シアン(青緑)、マゼンダ(赤紫)、イエロー(黄)を色の 3 原色と言う(以下、CMY と表す)。
光の3原色と色の3原色の位置関係をスペクトル上で示すと、
のようになる。この図から、
と表されることがわかる。
現像したアナログ写真やプリントしたデジカメ写真は、すべて CMY で表現されている。
これは、RGB を印刷物の基本色素に使うと、2 層が重なった時点で全ての光が吸収されてしまい、黒になってしまうからである。
無論、RGB の濃淡を調節すれば真黒になることは防げるが、それでも CMY に比べて明度が下がり、暗くなってしまうからだ。
1 枚のカラー写真を色分解して、3 枚の OHP フィルムに CMY の各層を印刷する。
この 3 層を重ねると、確かにもとの写真が現れる。このことから、現像した写真が色の 3 原色で成り立っていることがわかる。
この原理をもう少し詳しく見てみよう。
まず、入射光は白色光だから RGB の重ねあわせである。ここで C の層は図 2.2. の上の式から、R の光を吸収する効果があることがわかる 。同様に Y の層では B の光が吸収される。したがって、反射して目に入ってくる光は G のみとなる。
この原理を利用して、印刷物や現像したカラー写真などが表現されている。図 2.5. の例も、青色と黄色を混ぜたら緑色になるという、小学校から知っている常識を科学的に説明したに過ぎない 。
図 2.4. の例では、C の層が R の光のみを吸収した。この反射光(色素の色)C と吸収光 R の関係を補色の関係という。
図 2.2. からも分かるが、M に対応するスペクトルは存在しない。この赤と青の中間の色を加えると、直線だったスペクトルを円形に並べて表現することが出来る。これを色相環という。
この色相環において、丁度反対側に来る色同士が補色の関係になる(例えば C と R など)
カラーについて説明する前に、白黒写真の原理を確認しておく。
まず、臭化銀 (AgBr) を透明な膜に塗布したネガフィルムを用意する。被写体の白い部分に光が当たると、その反射光がネガに当たり、光化学反応で臭化銀を銀に還元させる。このとき、銀の部分は黒くなる。一方、黒い部分は光を吸収するから、ネガ上の臭化銀はそのまま残る。
次に、ネガフィルムを現像液に浸し、AgBr を洗い流す。これにより、AgBr の部分だけ透明なフィルムが露呈する。これでネガが完成する。
印画紙に、ネガを通った光を当てれば焼付けが完了し、印画紙上に写真が出来ます。
カラー写真のネガフィルムでは、臭化銀、感光剤とカップラー試薬が含まれています。
感光剤には、RGB それぞれに対応する 3 種があります。
例えば、下図の青い物体は RG の光を吸収するので、フィルムには B の光が届きます。すると、B の感光剤が青い光を検出し、臭化銀を還元させます。
この反応で生じた銀は、現像のとき銀イオンになって、現像液と下図のような反応を起こします。
これがさらに、フィルムに塗布されているカップラー試薬と反応します。
こうして、B の光を検出したときは、B の補色である Y の色素が生成します。
同様に R, G を検出したときも補色の C, M の色素が生成します。
こうして、検出した光の色(つまり被写体の色)と補色の関係にあるネガが生成します。
次に、ネガを焼き付ける過程の説明をします。先ほどのように青い物体を被写体に選ぶと、 Y の色素を持つネガが生成します。このネガに白色光を通すと、Y (= R + G) の光はネガを透過しますが、 B の光は吸収されてネガを透過しません。透過した RG の光でもう 1 回ネガの生成と同じ操作を行うと (但し今度はフィルムではなく印画紙を用いる)、R からは C の色素が、G からは M の色素が生成します。 減法混色により、G + M = B だから、この印画紙の上には元の被写体と同じ B の画像が生成します。
(文責:高坂)