虹 ~七色のバームクーヘン~

虹 ~七色のバームクーヘン~

1. 虹ボード

1.1. 目的

雨上がりの朝、西の空に(夕方なら東の空に)虹が見られる事がある。 これは、背後の太陽からの光が空気中を漂っている雨粒の中で反射して、人の目にとどくことによって発生している。 この現象を、虹ボードを使って体験してみよう。


図 1.1 虹発生時の光の通り道

1.2. 構造・原理

虹ボードの構造は次のようなものだ。 基材となるボードに黒い画用紙が貼り付けてあり、その上からビーズを均一に貼り付けたシートが張り付いている。 ビーズは雨粒の役割を果たし、入ってきた光を中で一度か二度反射させて、こちら側に戻す。 黒い紙はビーズを通り抜けていった光を吸収し(黒いものは光を吸収してしまうので黒く見える)、 再びビーズ側に戻ってこないようにしている(雨粒の場合はそのまま後方に抜ける)。


図 1.2 虹ボードの構造 (製作方法

1.3. 観察

この虹ボードを手に持ち、太陽を背にすると綺麗な虹を見る事ができる。 このとき、虹が 2 重に見える事がある。もし虹の色の順番が 2 本の虹で異なっていれば、 外側に見える虹は、自然の虹で見られる2重の虹(副虹)と同等のものだ。 今回のイベントスペースは残念ながら太陽の光がほとんど入ってこない。そこで、展示の時には人工の光を利用する。

プロジェクターの使用

プロジェクターの光を背にして虹ボードを見る。すると、2 本の虹が重なって見られるという。 これは光源がボードに近く、平行光線(太陽光は平行光)でないために、右目で見る虹が 左目で見る虹よりも少し右にずれるために起こる現象である。

懐中電灯・電気スタンドの使用

これらの光源はプロジェクターの光より弱い光なので、虹ボードに近い位置で使用する必要があるようだ。

プロジェクター同様、光源が平行光線ではないので、右目と左目で虹が見える方向少し異なる。 ただ、今回はプロジェクターの時と違って光源が視点とボードの間に来ているので、右目で見る虹がより左の方に、 左目で見る虹が右のほうに見える。そのため人間の目には、虹がボードより手前に浮き上がって見える。

実際に実験をした結果、光源を取り巻くような形で虹が見えた。懐中電灯を動かすとそれと一緒に虹も動いていった。

1.4. 副虹について

虹が見られるとき、その虹の周りに薄い虹がもう 1 つ見える事がある。これを副虹という。 この副虹も基本的には通常の虹と同じ機構で起こる。ただ唯一の違いは、水滴の中で光が二度反射していることである。 そのため、色が通常の虹(主虹)と逆の順番になる。また、2 回反射しているので太陽→水滴→観測者のなす角度が、 主虹の 40 度程度よりも大きく 50 度強となる。そのため副虹が見られるのは主虹の外側になる。


図 1.3 主虹と副虹 水滴の反射角度の違い

図 1.4 副虹のできる位置

2. 水滴のモデル実験

2.1. 目的

大気中の水滴の中で屈折が起こり、波長(色)の違う光で屈折の角度が異なるために虹ができる。
水滴ひとつのなかで、光がどのような軌跡で屈折(全反射)するのかを、見てみよう。 また、お客さん自身にやってもらうことによって、虹のできる難しさを体感してみよう。

2.2. 実験方法

ガラスコップに水を入れておき、光の軌跡が見やすくなるように 2 ~ 3 滴牛乳を加えておく。これが水滴ひとつとみなせる。
 黒画用紙で覆いをし、LED ライトを当てる(スリットが縦になるよう注意)

2.3. 原理・解説

光が水滴に入射すると、空気と水の屈折率が違うので屈折する。水滴から大気中に出るときも屈折する。 このとき、角度によっては大気中に出ないで、水滴内に反射されることがある。虹ができるためにはこのような反射が必要である。 上の図のように、水滴内で一度反射してから出て行く光が虹の光となる。これは 1 次の虹(主虹)という。 水滴内で二度反射してから出て行く光も虹の光となる。これは 2 次の虹(副虹)と言う。

水滴に光が入射すると,空気と水の屈折率の差で光が屈折する。 屈折するとき,短い波長(紫)は長い波長(赤)に比べて大きく曲がる。 光が入ってきた方向に対して、赤い光では 42 度、紫の光では 40 度に曲げられると 1 次の虹ができる。 51 度で二次の虹ができる。

主虹は外側が赤で内側が紫なのに対して、副虹は内側が赤で外側が紫となっている。 その理由として「主虹は水滴の中で一回、副虹は水滴の中で二回反射するから」と説明されることが多いが、これは間違い。 正しくは、光線が主虹と逆向きに曲がっているから。主虹の光の経路は半回転弱、といったところ。 副虹では光の経路がぐるっと一回転しているような形になって目に届いている。

理論上は 3 次の虹などもできてもおかしくないが、3 次の虹は太陽の方向に近く、発見は不可能に近い。 また、3 次の虹ができているときに、1, 2 次の虹が見えるとも限らないので、発見はますます難しい。

(文責:堀井)

3. プリズム

3.1. 目的

先にも述べたように、虹は太陽光が雨粒の中で一度反射した後に人の目に入ることで発生する。 しかし、太陽光というのは白色の光線である。ではなぜ虹はあのようにカラフルに見えるのだろうか? これには光の波長による屈折率(ある物質から他の物質に入る時の光の曲がりやすさ)の違いが関係している。 プリズムによる光の分散を通して、波長によって屈折率が違うことを確かめる。

3.2. 原理

太陽光は白い光だが、実は紫~赤(波長 380 ~ 780 nm)の人間の視認できる波長の光線を広く含んでいる。 光は波長によって屈折率が異なるので、太陽光をプリズムに入射させると図のように綺麗なスペクトルが観察できる。 波長の短い光線ほど屈折率が大きいので、図のようにプリズムにより近いところに投影される。

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図 3.1 プリズムによる白色光の分散

3.3. 観察

この実験も太陽光を用いることができないため、LED ライトや懐中電灯の光を用いて行う。 うまい具合にスペクトルが現れたら、図と対比させつつ短波長光線の方はより屈折率が高いことを確認する。 また、虹発生時にも同様の事が起こっているために虹が 7 色に見えることに注意すること。 この屈折率の違いにより、太陽→雨粒→観測者のなす角度は、赤い光で 42 度程度、紫色の光で 40 度程度となる。 ちなみに、虹ビーズはガラス製で、水より屈折率が大きいためこの角度が通常の虹より小さい。


図3.2 可視光線の色と波長

図3.3 虹に色が付く理由
(文責:大熊)

参考資料

http://www.t-scitech.net/history/miraikan/color/rainbow/