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構造色 ~モルフォ・パフェ~

1. 観察

ここでは、モルフォ蝶やその他の蝶の羽の様子を比較することで、色の見える仕組みについて考えていきます。 特に、モルフォ蝶の羽の色の見える仕組みである「構造色」について、詳しく調べていきましょう。

2. 解説

2.1. 用語解説

モルフォ蝶モルフォ蝶
チョウ目モルフォ蝶科の蝶の総称。中南米に分布。
 
一般的には、目を刺激して視覚をおこさせる(可視光)物理的原因と認識されるが、実際は可視光領域外の紫外線や 赤外線を含む電磁波のこと。現在の理論では電磁波と言われているように「波」としての性質と、光子という「粒子」としての 性質も併せ持つ。このネタでは、光の「波」としての性質(波動性)に注目する。また、各光によって「波長」が異なる。
振動がまわりの空間や物質に伝わる現象(運動の一種)。水面波、地震波、音波、光波等がある。

図中の「波長(山から谷への長さ)」の長さが異なると、色も変わります。つまり、色により固有の波長を持つのです。 ただし、色(可視光領域)の波長は 380 - 700 nm という、非常に小さなものです。

振幅を二乗すると「強度」になります。少し物理風味の説明を加えます。 「強度」とは、波の強さ、つまりエネルギーのことです。波は運動なのでエネルギーの式は「 E = 1/2 mv² 」と表せ、 v(速度)の二乗が絡んできます。ここで、振幅を時間について微分すると速度になり(振幅の単位が長さ m なので)、 その二乗がエネルギーと関係してくるので、強度を表すには、振幅を二乗するのです。 当然、強度が強いほうが人間は感知しやすいです。もちろん、限度がありますが。

干渉
二つ以上の波が重なり合ったときに、波が強めあったり弱め合う現象。 波の山・谷同士が重なれ強め合い、山と谷が重なれば弱めあう。

2.2. モルフォ蝶の羽の色

身の回りの多くは光の「吸収・反射」によって色が生じます。ここで赤・青・緑色を含んだ光を考えます。 この光を葉っぱに当てて、葉っぱが緑に見えたとき、この葉っぱは赤と青色を吸収し、 緑色を反射したことになります。つまり、我々は反射した光を認識しているのです。

光の干渉 しかし、色が生じるのは「吸収・反射」の仕組みだけではありません。今回のモルフォ蝶の羽では光の「干渉」が原因です。 先に述べたように、光は「波」として考えることができ、波は「干渉」します。 結論から言いますと、モルフォ蝶の羽が青く見えるのは、モルフォ蝶の羽では光の干渉が起こり、 青以外の色は干渉の結果弱め合い、青が干渉の結果強め合って我々の目に届くのです。

では、何故青の波長の色だけが強めあうのでしょうか? それはモルフォ蝶の羽にある「溝」が鍵を握っています。 この溝はとても小さく、光の波長オーダーです。ここで、赤・青色の波がモルフォ蝶の羽を反射する様子を考えます。 (図の凹凸がモルフォ蝶の羽の溝です。)

青色の波では、強め合うように干渉し、赤色の波では弱め合うように干渉します。 つまり、溝の深さが青色の波長の整数倍なのです。 その他の色の波長では、上手く強め合うように干渉せず、その色の波が消えることが無いにせよ、 我々の目に入る光の量が青色に比べて極端に少ないので、結果的に青色に見えるのです。 羽を見る角度によって、強め合う波長が変わるので、羽の色も若干変わってくるのです。

(実際のモルフォ蝶の溝の深さは 2 μm 位あり、1 波長分の長さではない。 また、溝は図のような単純な凹凸ではなく、もっと複雑なのでこれで全てが説明できるわけではない。 詳細は『モルフォ蝶の鱗粉の構造』を参照)

モルフォ蝶の羽以外の構造色の例として、シャボン玉の膜や CD の裏に見られる色や、孔雀の羽などがあります。 帝人・日産・田中貴金属の 3 社が構造色の開発を研究し、衣類にも用いられています。 今後の展望としては、可視光領域の波長だけでなく、紫外線や赤外線波長を選択的に透過、反射させることで、 対紫外線や赤外線を閉じ込めて保温性が高い服の開発などが挙げられます。

(文責:木村)

http://www.t-scitech.net/history/miraikan/color/structuralcolor.html