聞く?効く!おくすり - くすり班

未来の薬

私たちを病気から守ってくれるくすりですが、欠点も持っています。その 1 つが副作用。 くすりを使うと、本来の狙いとは違ったからだの部分に影響が出てしまう現象です。 この副作用を抑えるために、どのような技術が研究されているのでしょうか。

ドラッグデリバリーシステム (DDS)

突然ですが、ドラッグデリバリーシステム(以下DDS)は、薬物送達システム、薬物配送システムなどと訳されています。 DDS は薬の副作用を抑え、目標とする患部に薬物を効果的かつ集中的に送りこむ技術の事です。 今までの薬は体内で吸収・分解されたりして、患部にたどり着くのは極微量でありました。 みなさんも、「あれ、この薬本当に効いているのかな?」と、疑問に思ったことはありませんか。しかし、だからと言って 薬の量を増やすと体への負担が大きくなってしまいます。一般に薬は必要な時に、必要な量を、必要な部位に送りこむ事が 理想とされています。そこで、薬を膜などで包む事により患部に到達するまでに吸収・分解されないようにして、 過剰な薬物投与を抑える技術、DDS が今注目を集めているのです。 ドラッグデリバリーシステム

いろいろなDDS

ナノテクノロジーを使った DDS

ナノテクノロジーとは超微細技術の事でありますが、DDS において、ナノテクノロジーは不可欠な技術であります。例えば 抗がん剤においては、ナノサイズの非常に小さなカプセルの中に制癌剤や遺伝子を入れて注射します。そうすると、カプセルは 毛細血管の中も難なく通り抜け、癌細胞にだけ集まるようにしておくと、そこの患部でカプセルが壊れ薬が出て癌細胞を 退治するわけです。ここで要求される機能は、運搬媒体(カプセル等)に薬物を安定的に封じ込める封じ込め機能、目標とする 患部まで安定して確実に運搬できる機能、目標となる部位に至る途中で消化管などに吸収・分解されない非吸収機能、目標となる 患部以外では作用しない、病巣部位においてのみ活性化され効果を発揮する活性機能、目標とする患部にて、高濃度で薬物を 放出する事が出来る放出機能などがあげられる。

電極を使用した DDS

電極を使用した DDS は、皮膚に電極を貼付して薬を体内に送りこむ訳ですが、皮膚に貼付するところは貼薬に似ていますが、 貼薬と違って電気的にイオン誘導して、薬物を体内に、取り込みます。主な特徴は、痛みを伴わない。薬の作用標的必要な量を、 必要な時に、最も効果的に送達させる。水溶性薬剤を経皮で投与できる。副作用を軽減できる。過剰薬物摂取を防ぐ事が出来る。 では、ここで電気的経皮導入装置(イオントフォレーゼ)を用い薬物が能動的に皮膚の角質膜を移送するメカニズムを 模式化した図を載せます。

電極を使用したDDS
(ADIS はアドバンス社の開発した脱分極イオントフォレーゼシステム)

ニトログリセリンの貼り薬も DDS

DDS の定義は広く例えば狭心症の発作の予防に繁用されているニトログリセリンの貼り薬(ニトロダーム TTS)のように、 貼っている期間中、つまり 24 時間中、皮膚を通して血液中に有効成分が同じ速度で吸収されるような加工も DDS に 含まれるのです。

テーラーメイド医療

現在の医薬品は、全ての人に対して全く同じ効果を発揮できるわけでは有りません。人によってはある薬の効果が 低かったり、逆に効きにくかったりすることがあったり、更には副作用が他の人より強かったりすることもあります。これは、 人それぞれ体の特性が違うために起こることです。たとえば、ある薬の排泄が早い人は薬が体内にとどまっている時間が短いので 薬の効きが弱くなりますし、代謝に関係する酵素の量が人より少ない人は薬を代謝する能力が弱くなってしまいます。

このような個人差の原因が明らかにできれば、ひとりひとりに合った病気の治療や予防などをすることができます。 このような人それぞれの体の特性に合った治療を、テーラーメイド医療(オーダーメイド医療)と言います。

薬の効果の個人差

それではこのような個人差はどうして起こりうるのでしょう? その原因は個々の遺伝子の違いに由来していると 考えられています。人は細胞内に遺伝子というものを持っていて、それは人それぞれに少しずつ違っています。この遺伝子と いうのは、いわば体を形作り働かせるためのタンパク質や酵素などの設計図です。ですから、それを元に作られる私たちの 体や働きにも少しずつ違いが生まれるのです。

遺伝子配列の違い

遺伝子は 4 つの塩基を並べたもので設計図を表しています。遺伝子はそのほとんどの部分は全ての人が同じ配列を していますが、細部が人によって異なることが有ります。人口の 1% 以上の人が異なった配置を持っている塩基のことを SNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多形)と言います。SNP の違いとそれから生じる体の特性の違いとの関係を あらかじめ知っていれば、遺伝子を調べることでその人の体の特性を知ることができます。そこからその人にあった薬を使って 治療や予防を行うのです。将来的にはひとりひとりの遺伝子を分析して、その情報からそれぞれの人にあった薬を設計することも できるようになるのではないかと言われています。

http://www.t-scitech.net/history/miraikan/medicine/medicine/future_medicine.html