機体の設計
 機体は木材で製作します。コストがい、材料の加工が容易なことがその主な理由です。 機体は人が乗るスペースになること以外にも、送風機の固定、機体の上面から吸い込んだ空気を床面まで導くなどの幾つかの働きがあります。

 送風機から吸い込んだ空気の流れですが、左のように2通りの方法が考えられます。 今回は、過去の経験から空気の大部分はスカート内を経由して床面まで空気を導き、一部の空気は直接床面に導く構造としました。

 こうすることで、スカートが適切に膨らむと思われます。

 機体構造を決定する上でもう一つ重要なことがあります。工作教室に参加してくれる十数人の子供達が同時進行で作業が出来るようにすることです。何もやるコトがなく待機する子は極力出でないようにしなくてはけません。
そこで、機体を「天板×2」、「フレーム」、「底板」の三つの部分に分けて製作できるように考えました。ここにさらに、電池ボックス製作部隊、スカート製作部隊を編成するので暇をもてあまして悪ふざけを始める子は出ないであろう。 そう願いたいものだ・・・ (実際には、ノコギリでちゃんばらする子、金槌を振り回して走り回る子、ホットボンドで我々の髪の毛を接着しようとした子が。。。)




ホバークラフト組立て図

天板
 一枚の大きな板(厚さ9mm)を天板になる板を2枚切り出す作業。送風機の空気吸込み口をホールソーで打ち抜く作業。送風機ユニットを天板の裏に取り付ける作業などを行う。 天板を2枚に分けたことで、参加者の一極集中を避けることができる。また、天板はフレームにボルトで固定する構造にして、万一、送風機や機体内部に問題が生じた場合でも、早急に修理や交換といった対処ができるようになっている。

フレーム
 角材を切り出す作業。接着剤や釘で接合する作業などを行う。 スカートはこのフレームと底板の間に取り付ける。スカートの取付け作業には手間と時間がかかることが予想されるが、天板の送風機取り付け作業と、スカート取り付け作業同時進行で行える構造にすることで作業の効率化を図った。もし、天板にスカートを取り付ける構造ならば同時進行は不可能になってしまう。 また、万一、内部に問題が生じた場合でもスカートを取り外すことなく機体内部にアクセスできる。

底板
 天板と同様に一枚の大きな板(厚さ4mm)から所望の寸法に板を切り出す作業。天板やフレームとの距離をとるためのスペーサーを角材から切り出す作業。材料の接合などの作業を行う。 角材を切断する精度が多少悪くても、所望の高さが
必ず得られるように、スペーサーの高さ = 切断前の角材の幅になるように設計した。

スペーサー
 機体上面に凹凸が生じないように、天板とフレームの間に厚さ10mmのスタイロフォームの板を入れる。


スカートの設計
 スカートの材料は、テーブルクロス用の表面に塩化ビニールが張ってある布を使う。 断面が左の図のように2種類の円弧になることを想定して、布地の裁断や縫製を行う。

 円筒を斜めに切って展開すると、どのような曲線が現れるでしょうか? 答えはサインカーブです。 このことは広く知られていますが、数学的に導きだしたことってありますか…?  俺は円筒座標系を使って考えましたが・・・

 布地は右の図のように切り出します。 それぞれ2枚ずつ作って端っこを縫い合わせます。

右の図には、縫い代が入っていないので要注意のコト!

その他の準備
 ホバー座布団本体の設計はわりました。これで工作教室当日は参加者達が頑張ってくれれば良い!
・・・と、いうわけにはいきません。 イベントの時間や当日に使える工具類が限られていることもあり、モーターの固定金具、電池ボックスの電極板といった金属製の部品は予め我々で加工しておくことにしました。
 
64本のニッケル水素電池をどうやって充電するか?

 これはナカナカ頭の痛い問題です。
俺の家にある充電器は一度に4本までしか充電できない上に、充電が終わるまで10時間ぐらいかかってしまいます。 
こんなメンドクサイことやってられねぇ〜よ!

ならば… 
-ΔV制御方式急速大容量充電器を作ってしまえぃ!
というわけで、さっくりと8本直列対応・充電電流5Aの大容量充電器を作ったぞぉ〜 こいつを使え、64本の電池を5時間程度で充電できてしまうハズだ。

 人が乗れるホバー座布団の製作は「浮いた!!」という思い出以外に持って帰るモノがない。これだとなんだか寂しいよね〜 だったら、手乗りホバーを作って持って帰ってもらいましょう。 ホバークラフトが浮く原理を理解して、送風機に馴染んでくれると嬉しいなぁ・・・
完成イメージはこんな感じ・・・

材料は厚紙

モーター固定も厚紙で…

機体はスタイロフォームで製作します

 使う材料は、厚紙(切る場所等は印刷済)、スタイロフォーム、マブチモーター、電池ボックス、電池。
プロペラはどのような形にしたら浮上するのか参加者の子供達に手を使って考えてもらいたい! だから、あえて何も教えない方針で…   パワーポイントを使って説明するのがメンドクサイということが理由はありません。


・送風機の羽根車は厚紙
・動力は模型用小型モーター 24個
・電源は単3電池 64本
・作業者は十数人の小学5年〜中学2年。
・失業して悪ふざけを始める子が出ないような工程の割振り。
・作業時間の制約。
・目的はマシンの完成ではなくて、「工作教室」

このような厳しい条件下でも確実に人を乗せて浮上しないといけない!!
今回の「ホバークラフト製作」イベントは、東工大ScienceTechnoの機械系メンバーが今まで大学で勉強してきた機械工学や電気工学の知識、長年科学イベントを企画してきた経験の集大成だ。

設計・企画編 おしまい


イベント当日編につづく