牛乳の主成分は水であり、その中にさまざまな栄養分が含まれています。これらは固形分と呼ばれます。 牛乳に含まれる固形分を大別すると以下のようになります。
カゼインは酸性になると凝固する性質があります。これを利用すれば、牛乳の白い色はカゼインによるものであることを 確認できます。今回は、酢を使って牛乳を酸性にします。
搾りたての牛乳は、さまざまな加工をほどこされた上で出荷されます。 なかでも「均質化」と「殺菌・滅菌」という工程は、市販される牛乳の性質に大きく影響されます。
加工されていない牛乳に含まれる脂肪球は、直径が 0.1 - 10 µm とまちまちの大きさになっています。この牛乳に 高圧をかけて、狭くて曲がっている管の中を高速で通過させます。すると大きな脂肪球は砕け、脂肪球は平均して直径 3 µm 程度になります。この工程のことを均質化といいます。均質化によって牛乳の性質は次のように変わります。
殺菌・滅菌は、牛乳に混入した雑菌を死滅させるために行われます。主な加熱法は、以下のように四つに分けられます。
名称 | 加熱温度 | 加熱時間 |
---|---|---|
LTLT 殺菌法 | 62 - 65 ℃ | 30 分 |
HTST 殺菌法 | 72 - 85 ℃ | 15 分 |
UHT 殺菌法 | 120 - 130 ℃ | 2 分 |
UHT 滅菌法 | 130 - 150 ℃ | 0.5 - 15 秒 |
加熱温度が高い方法だと短時間で確実に殺菌できますが、牛乳中のたんぱく質が熱で変形してしまうため加熱臭がつき、 風味が落ちてしまいます。逆に加熱温度が低い場合には牛乳のおいしさは保たれますが、 長時間殺菌しなければいけないため生産性は劣ります。 これらのことを考えて、現在多くの牛乳は、生産性と風味のバランスが良い UHT 殺菌法で処理されています。
牛乳を温かくすると液面に膜が張ります。これは以下のようなメカニズムによって説明できます。
この現象は発見者の名前を取って「ラムスデン現象」と呼ばれています。豆乳から湯葉が取れるのもこれと同じ原理です。 牛乳の場合、膜を構成する成分は乳脂肪が 70% 以上、ホエイたんぱく質が 20 - 25% となっています。この膜は除去しても、 膜を構成する成分が液中に一定以上の濃度存在する限り、温めれば何度でも出てきます(ただし段々出にくくなってきます)。 また牛乳に膜を何度も発生させると、膜の主成分である乳脂肪やホエイたんぱく質の濃度は低くなります。 一方、乳糖は膜の構成にあまりかかわらないため、膜ができる際に牛乳の水分が蒸発することによって濃度が高くなります。
牛乳の膜を構成するのは大多数が脂肪であるため、牛乳に含まれる脂肪球の大きさは膜の厚さに直接関係するのでは ないかと考えらます。 そこで、脂肪の量が等しい普通の牛乳と無均質牛乳を用い、同じ条件下で膜を作ってその厚さなどを比べてみます。
1. 無均質牛乳に出来た膜 |
2. 普通の牛乳に出来た膜 |