あ行

あーるえぬえー【RNA】

リボ核酸 (ribonucleic acid) の略。アデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、ウラシル (U) という塩基、リボース という糖、リン酸が(塩基)-(リボース)-(リン酸)という基本単位(ヌクレオチド)をつくり、それが鎖状につながった ポリヌクレオチド(ヌクレオチドがたくさん並んでくっついたもの)。細胞の核や、細胞質(核以外の細胞の内部)に存在している。 基本的な働きとしては DNA からタンパク質をつくるときの設計図の暗号を伝達したりする物質。核の中にある DNA から 必要な情報をメッセンジャー RNA (mRNA) が読みとり(転写)、リボソーム RNA (rRNA) などからできているタンパク質合成工場の リボソームに運ぶ。そして、トランスファーRNA (tRNA) が運んできたアミノ酸がリボソームで結合することにより タンパク質ができる(翻訳)。RNA はウイルスのゲノムとなることも多い。

あいぴーはんどりんぐ【IP ハンドリング】

非遺伝子組換え作物を外国の農場から日本の食品製造業者まで生産流通の各段階で混入が起こらないように管理し、 そのことを書類などによって明確にする社会的検証方法。農林水産省委託の食品産業センターが作成した『流通マニュアル』に のっとり分別流通管理が行われている。IP ハンドリングによって管理された原料は '非組換え' と食品に表示することができる。 しかし、このように管理されたものであっても、流通過程で多少の混入は避けられない。こうした '意図せざる混入' はダイズ、 トウモロコシ共に混入率 5% 以下とされこの範囲内なら '非組換え' として流通が可能。トウモロコシは風媒花(花粉が風に 飛ばされることによって受粉する花)であることや、もともと分別流通されていなかった作物であることから適切な混入量を 決定することは難しいようだが、現在の流通状況からダイズは 5% 以下の流通は十分可能と考えられている。この値は あくまでも上限であり、実際の混入率は企業努力によってもっと低い値である。

あぐろばくてりうむほう【アグロバクテリウム法】

アグロバクテリウムという土壌中に普通に見られる細菌の一種を用いた遺伝子導入方法。アグロバクテリウムは自分の持つ プラスミド(核外にあるの環状 DNA)を植物細胞に入れ、その細胞の DNA を組み込み換えることで自分の栄養になる物質を作らせる。 同時に組み込まれた植物ホルモンを作る遺伝子の働きでコブ状の塊などができてしまう。この性質を利用して、不必要な遺伝子を 削除して、代わりに植物に入れたい目的遺伝子を組み込むことで、簡単に植物に遺伝子を導入することができる。 アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法は開発が進み、現在かなり多くの植物で用いることができる一般的な方法である。

あれるぎー【アレルギー】

体を守るための機能が自己や無害な物質に対して過剰な反応を起こしてしまう状態。アトピー性皮膚炎や花粉症などが具体例。

あれるげん【アレルゲン】

アレルギー反応の原因となる物質のこと。具体的には花粉やハウスダスト、種々の食品や薬剤などがあげられる。

あんぜんせいひょうか【安全性評価】

日本における遺伝子組換え作物の安全性に関する評価は、実質的同等性の考え方を用いることや積み重ねてきた 経験知識を活用するなど、国際的な基準に沿って決められている。環境に対する安全性について、基礎研究段階 (閉鎖系及び非閉鎖系温室での実験)は文部科学省、産業利用段階(隔離圃場による試験)は農林水産省が担当して ガイドラインを定めている。また、畜産飼料や花の利用は農林水産省がガイドラインを定めており、食品としての利用に ついては厚生労働省が食品衛生法に基づいた安全性審査を義務づけている。

いちいでんしいちこうそせつ【一遺伝子一酵素説】

一つの遺伝子はただ一つの酵素を作るという仮説。ビートルとテータムが 1940 年代に変異体のアカパンカビを使ってアミノ酸や ビタミンの生合成の遺伝的制御に関する研究を行いビートルがこの結果をまとめて一遺伝子一酵素説と名付けた。その後、いくつかの 例外が見つかり、現在はそれを発展させた一遺伝子一ポリペプチド鎖説が適応されている。これは一つの遺伝子は一続きの ポリペプチド鎖(酵素などのタンパク質の部分構造となるアミノ酸のつながり)の構造を決定するという仮説。

いでんし【遺伝子】

遺伝を担うもの。人間には約 3 ~ 4 万の遺伝子がありこの情報は親から子へと複製し伝えられていく。 遺伝子の本体は一部のウイルスなどの例外を除いて DNA と呼ばれる化学物質であり 4 種類の塩基(アデニン (A)、グアニン (G)、 シトシン (C)、チミン (T))がずらりと並び、その並び方によって様々なタンパク質を作り出している。つくられたタンパク質は 生物の体を作る材料や、体を調整する酵素などになる。DNA =遺伝子ではなく、DNA の中で生物に役に立つタンパク質を作る部分 (エクソン)が遺伝子である。(今のところタンパク質を作らないといわれている DNA 塩基配列はイントロンと呼ばれている)。

いでんしくみかえ【遺伝子組換え】

試験管内で、異なる生物から分離した DNA を制限酵素(DNA を切る酵素)や連結酵素(DNA をつなげる酵素)を用いて、 切断、結合して新たに組換えた DNA を作ること。通常はプラスミドやファージ(細菌に感染するウイルス)などを 運び屋(ベクター)にして組換える、遺伝子工学の基本的技術。遺伝子組換え自体はあらゆる生物が交配するときに起こるが、 現在使われている'遺伝子組換え'という言葉には古典的な品種改良による遺伝子組換えは基本的に含まれていない。

ういるす【ウイルス】

DNA か RNA のどちらかをゲノムとして持つ、感染した細胞の中でしか増殖することができない感染性の小さな構造体。 元々はラテン語で '毒 (virus)' という 意味を持っていたので、後に転じて '病原体' を意味するようになった。 ウイルスの定義は (1) 遺伝物質(核酸)として DNA か RNA のどちらかを持つ、(2) 核酸だけから複製される、 (3) 二分裂で増殖しない、(4) 自分でエネルギーをつくらない、(5) 宿主(感染細胞)のリボソーム(タンパク質を作る器官)を 自分のタンパク質合成に利用する。以上のことから一般に生物とは別の扱いをされる。

えふえーおー【FAO】

Food and Agriculture Organization(国連食糧農業機関)の略。世界の栄養水準や農業技術の向上を目標として設立された機関。 現在の最大の課題はアフリカの飢餓の解消である。また、地球規模で急減している農作物の多様な遺伝子ほ保全や利用を 図ろうとしている。それに関連して、遺伝子組換え作物についても WHO と共同して食品に関する国際規格を作成するため 'コーデックス委員会' を組織し、安全性評価や表示のあり方について検討されている。

えらいざほう【ELISA(エライザ)法】

抗体(特定物質に反応するもの)と酵素を結合させたものを作り、抗体に特定物質が結合すると酵素が変化してその存在を知る ことができるという方法。組換え食品に関しては、その食品に特有なタンパク質が反応するような抗体を取り付けて検出する。

えれくとろぽーてーしょんほう【エレクトロポーテーション法】

電気の刺激を利用して有用遺伝子を直接植物細胞に導入する方法。二つの細胞を一つにする細胞融合にも利用されている。 まず、有用遺伝子を導入したい植物のプロトプラスト(植物細胞にある細胞壁を取り除いた細胞)を作る。それを有用遺伝子と共に 溶液中に入れて電気パルスを与えることにより、細胞膜に短時間小さな穴があいて外液と共に有用遺伝子が細胞内に入る。 その後導入されている細胞を選択、培養して組換え作物を作る。しかし、品種改良したイネなどのように細胞が弱まった植物は プロトプラストが作れないために利用することができない。現在はあまり用いられていない方法である。

えれべーたー【エレベーター】

穀物などを集積する施設。カントリーエレベーターは農家からの農作物を集めて送り出す施設。そこから送られた農作物を 川を使って輸出港まで送るために一度集められる施設をリバーエレベーターという。エクスポートエレベーターは輸出用の 大型貨物船(バルク船)に農作物を積み込むための施設。

えんき【塩基】

核酸やヌクレオチドの塩基性(溶液中では + に荷電する物質)の部分。糖、リン酸部分と区別して塩基と呼ぶ。 塩基にはアデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、ウラシル (U)、チミン (T) などがある。

おーいーしーでぃー【OECD】

Organization for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略。欧米と太平洋地域の先進国 29 カ国が 世界的な立場から国際経済を協議するための政府間組織。経済成長の維持、発展途上国への援助、貿易の拡大を目的としている。 1986 年にバイオテクノロジー安全専門家会合が開かれ、組換え DNA 及び遺伝子組み換え食品の安全性に関する報告書を作成した。 また、1993 年のバイオ食品に関する報告書では '実質的同等性' という概念を使用した安全性評価を提案した。

おおかばまだら【オオカバマダラ】

きれいな黒とオレンジの羽を持つマダラチョウの仲間。アメリカではロッキー山脈を境に、それぞれ西部と東部の群れに 分けられ、秋になると西部の群はカリフォルニア、東部の群はメキシコに移動し、集団で越冬する。 越冬するために 400 km ほど飛ぶ渡りチョウである。このチョウの幼虫がが遺伝子組換えコーンである Bt コーンの花粉が かかったトウワタという植物を食べて死んでしまったという報告がなされた。これはアメリカ人に親しまれている チョウが Bt コーンの花粉で絶滅してしまう恐れがあるという不安を呼び起こした。しかし、実験を再度検証した結果、 人為的な環境での実験であり野外環境を反映していないことから問題はないとされた。

か行

かく【核】

細胞内に普通 1 つ存在し、DNA が含まれている小体。核は真核生物の場合核膜で囲まれており(膜で囲まれていない生物を 原核生物と呼んでいる)、中にはそのほかに、数個の核小体と核液がある。細胞分裂をするとき、染色糸は染色体にまとまり、 その他の部分は消える。

かくさん【核酸】

全ての生物の細胞に含まれる、生命の維持に欠かせない高分子物質。(塩基)-(糖)-(リン酸)が結合したヌクレオチドが 単位となる。糖の種類によって RNA と DNA に分けられる。遺伝情報を蓄えたり伝えたりする機能を持つ。

かくりほじょう【隔離圃場】

まわりをフェンスで囲み、焼却炉、洗い場を備えた小規模で柵などで他の場所と隔てられた農場。ここでは、 導入遺伝子の発現、周囲の生物への影響、花粉の飛散による環境への影響などを調べる。

かるす【カルス】

植物の一部を切り取り植物ホルモンを含む培地上で培養されたときに形成される無定形の細胞塊。植物体のあらゆる所から カルスを作ることができる。適当な条件下では分化(各組織の細胞に変化していく)する前の細胞のまま無限に増やすことができる。 しかしある条件下で培養すると葉が出たり根がでたりと組織分化を起こす。

かんじょうでぃーえぬえー【環状 DNA】

DNA 鎖の端が結合して環状になった DNA。ほとんどの原核生物の染色体 DNA やプラスミド・ミトコンドリア(エネルギーを作る 器官)・葉緑体(光合成を行う器官)などの DNA は一般的に環状 DNA である。ウイルスの DNA も環状であることが多い。

ぐりほさーと【グリホサート】

除草剤ラウンドアップの主要成分として用いられている除草剤。あらゆる植物を枯らすことができる除草剤で、ヒトを はじめとする動物に対する毒性はほとんど無く、連続して使用しても微生物が分解してしまうために土壌中に残留することも ほとんど無い。あらゆる植物を枯死させてしまうのは、植物が芳香族アミノ酸を合成するために必要な酵素をグリホサートが 破壊してしまうからである。グリホサート耐性作物はグリホサートの影響を受けない微生物の酵素の遺伝子を代わりに 組み込むことで、順調にアミノ酸を作って生き続けることができる。

けいしつてんかん【形質転換】

細菌などで遺伝子の一部を他の個体に移し入れる交雑の一つの形態。与える側(供与体)から直接受け取る側(受容体)に DNA を 移し、受容体の細胞内で組換えさせる。細菌だけではなく、プラスミドも含めて DNA 分子を直接細胞内に導入する場合をいい、 遺伝子工学の基本技術。

げのむ【ゲノム】

親から子へ伝えられていく生物の様々な形質を作り上げるための設計図が遺伝子だが、ゲノムとはその中で 1 個の生物を 作るために必要な最小限の遺伝子セットのこと。ヒトの場合は父から 30 億塩基対の 1 ゲノム、母から 30 億塩基対の 1 ゲノムを 受け継ぐ。

こうごうせい【光合成】

植物が光のエネルギーを利用して二酸化炭素と水から有機物を合成する過程。炭素同化(炭酸固定:植物が二酸化炭素から有機物を 作ること)の代表例。これによって固定された二酸化炭素とほぼ同じ物質量の酸素が発生する。光合成は細胞内の葉緑体という器官が おこなっており、光を使ってエネルギーを作り出す光化学系とそれを使って炭酸固定をおこなうカルビン回路が存在する。

こうざつ【交雑】

遺伝的に違った形質を持つ個体を掛け合わせること。この個体が作りだした子孫を調べることによって、 染色体中の遺伝子の位置を知ることができる。似たような言葉に '交配' があるが、これは単に二つの個体を 掛け合わせる(受粉、接合、受精)ことをいう。

こうせいぶっしつ【抗生物質】

微生物によって作られる化学物質で、他の微生物に対して作用し、その発育を阻止または死滅させる物質のこと。 最近は化学的に合成された物質も抗生物質と呼んでいる。

こうそ【酵素】

生体細胞内で作られ触媒(自分は変化せずに相手の反応を促進させる)の働きをするタンパク質。酵素の中には 触媒作用を行うために金属イオンや複雑な有機物を必要とするものが多い。酵素の触媒作用は特異的で、 一種類もしくは共通の構造を持った物質にしか反応しない。また、温度や pH によって機能を失う変性を起こす。

こうはい【交配】

二つの個体を掛け合わせる(受粉、接合、受精)ことをいう。両親の遺伝的違い(遺伝子型の違い)は問題としない。 とくに遺伝子型の異なる個体を掛け合わせることを交雑という。

こーでっくすいいんかい【コーデックス委員会】

FAO と WHO が共同して組織されている合同食品規格委員会。食品に関する国際規格を作成するための組織である。1996 年以降、 遺伝子組み換え食品の表示を検討している。99 年には『バイオテクノロジー応用食品特別部会』が作られ遺伝子組み換え食品の 商品化への安全性評価や検査法に関する検討などが行われ、報告書も出されている。第 1 回と 2 回目の会議は日本で開かれた。

こどん【コドン】

mRNA の 3 個の連続した塩基(トリプレット)のこと。コドンの 3 つの塩基配列に一つのアミノ酸が対応して、 それがつながることでタンパク質が作られる。

さ行

さいぼう【細胞】

生物体を構成する単位。形や大きさは生物の種類や組織によって様々だが、基本的構造と機能はほぼ共通している。 明確な核がある真核細胞と、細菌やらん藻のように明確な核がない原核細胞がある。真核細胞は普通一つの核があり、 それ以外を細胞質という。細胞質には呼吸を行うミトコンドリア、物質の分泌をするゴルジ体、タンパク質合成を行う リボソームなど様々な器官(細胞小器官)がある。植物細胞の場合、貯蔵庫としての液胞や光合成を行う葉緑体がある。 また、動物細胞の場合は細胞分裂を助ける中心体が存在する。

ざっそうせい【雑草性】

雑草とは本来、農耕地などでつくる目的生産物以外のもの。雑草性とは自分(植物など)が それまで存在していなかった場所に新たにうまく適応して目的生産物を阻害する雑草となる性質のこと。

じっしつてきどうとうせい【実質的同等性】

食品としての安全性評価における基準となる考え方。今まで安全に食べてきたものを基準として相対的に遺伝子組換え食品を 評価する。組換える以前のものと比べて、成分や繁殖性などの特徴が同じであり、導入遺伝子から作られているタンパク質の 安全性が確保されればその食品は安全とされる。

じゃすほう【JAS 法】

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律。2007 年 7 月に改正され全ての生鮮食品、加工食品・飲料に 品質表示・原産地表示が義務づけられた。また、2001 年 4 月より遺伝子組換え食品に関しても品質表示の観点から、 外国産の遺伝子組換え作物の使用に関して『使用』、『不分別』または、『不使用』を食品に表示することを義務づけた。

じゅふん【授粉】

めしべにおしべの花粉を人間が人工的につけること。'受粉' は自然におしべの花粉がめしべにつくことを言う。 個体が自分の花粉で受粉することを自家受粉、他の個体の花粉が飛んできて受粉することを他家受粉という。

しょくひんえいせいほう【食品衛生法】

飲食が原因となる衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上を目的とした法律。対象物として食品、食品添加物、食品を 扱う器具及び包装容器、幼児が使うおもちゃ、洗剤が上げられている。遺伝子組換え食品も公衆衛生の観点から 『使用』『不分別』『不使用』を表示することが JAS 法同様に義務づけられている。内容は JAS 法と全く同じ。

しょくぶつほるもん【植物ホルモン】

高等植物の体内で生産され、微量で成長などの重要な生理作用を持つ有機化学物質のこと。つまり、与える植物ホルモンを 調整することによりその植物の成長をある程度調整できる。動物の 'ホルモン' のように植物ホルモンが作られる器官や 働く場所などは明確にされていない。

すたーりんく【スターリンク】

害虫抵抗性の遺伝子組換えトウモロコシ。日本では安全性が認められていないこのトウモロコシがアメリカから輸入されて 問題になった。現在、アメリカでは 99% 回収され、作付けは 2001 年以降行われていない。また、日米で輸入時に スターリンクが含まれていないかを随時確認している。

せいげんこうそ【制限酵素】

ファージ(細菌に感染するウイルス)の DNA が細菌内に侵入したときに働き、自分の DNA と区別して切断する自分を 守るための酵素。これによってファージの感染を制限するために制限酵素と呼ばれた。この酵素は特定の塩基配列を認識して、 その場所を切断する性質を持っているため、遺伝子工学で頻繁に利用されている。

せいぶつたようせいじょうやく【生物多様性条約】

生物多様性の保全、生物資源の持続可能な利用、生物多様性の利用に基づく利益の公正な分配を目的にかかげる国際条約。 1992 年の『地球サミット』で調印された。2000 年の生物多様性条約特別締結国会議で遺伝子組換え生物が環境に悪異境を 及ぼすことのないよう、輸出入に必要な手続きを定めた『バイオ安全議定書』が採決された。

せんしょくたい【染色体】

細胞が分裂するときに色素を滴下すると良く染まる構造体。核内の染色糸が分裂時に凝縮してできる。遺伝子の担い手となる 物質で各遺伝子は一定の順序で配列している。染色体の数は種によって一定で、ヒトは男女ともに 23 対あり、合計 46 本である。 そのうち 2 本は性染色体と呼ばれ、X 染色体と Y 染色体のうち XX の場合は女性、XY の場合は男性となる。

せんとらるどぐま【セントラルドグマ】

遺伝情報からタンパク質合成に至る一連の流れのこと。 DNA の塩基配列の遺伝情報が mRNA に写し取られ(転写)、 その後リボソームでタンパク質が合成(翻訳)されて遺伝子が発現する。

そしきばいよう【組織培養】

植物の場合、その分化全能性(たった一つの細胞から完全な植物体を再生できる能力のこと)をいかして、植物体から成長点などの一片を切り取り、それを培地などで生かし続ける技術のこと。

た行

たーみねーたー【ターミネーター】

DNA にの中にある遺伝情報を mRNA に転写する際にその転写をおわらせる目印となる DNA の領域。

たいせい【耐性】

「~に対する耐性」というふうに使い、その意味は~に耐えることができる性質(をもつ)という意味。 たとえば、除草剤に対する耐性や害虫に対する耐性など。

だいちょうきん【大腸菌】

細菌の一種。ヒトを含めてほ乳類の腸管を寄生場所としている腸内細菌。グルコースを分解し酸を作って生きている。 基本的に健康な人の腸管に住み着いているため病原性は無いので、ある種の大腸菌は分子生物学やバイオテクノロジーの 研究材料として広く利用されている。

だえきせん【唾液線】

(1) ハ虫類以上の高等動物の口に開かれている粘液(唾液)を出す外分泌腺の総称。 (2) 無脊椎動物の口に開かれている腺の総称。その腺から粘液や糸(絹糸など)、毒を出す。

だぶるえいちおー【WHO】

World Health Organization(世界保健機関)の略。国際的保健事業の中心機関として、緊急支援や長期間を考えた 保健事業強化の援助、伝染病対策など多くの役割がある。世界の人々が可能な限り高い水準の健康を得られるように活動している。 遺伝子組換え作物に関しては、健康に関係する問題から FAO と共同して食品に関する国際規格を作成するため 'コーデックス委員会'を組織し、安全性評価や表示のあり方について検討されている。

だぶるてぃーおー【WTO】

World Trade Organization(世界貿易機関)の略。自由な世界貿易の拡大を目的とした国際機関。 それまであった GATT(ガット)のようにモノの貿易だけではなくサービス貿易や知的財産権などの広い分野も対象にしている。 遺伝子組換え作物に関して国際的貿易を巡る議論が 1999 年の WTO 閣僚会議で持ち上がったが、日米欧の主張に隔たりがあり、 妥協点が見いだしにくいのが現状である。

タンパクしつ【タンパク質】

細胞の構成成分や、酵素の主成分となる高分子で、アミノ酸がペプチド結合で多数結合したもの。タンパク質の アミノ酸配列は DNA の塩基配列に基づいている。また、タンパク質は特有な立体構造をとりそれによって様々な機能を持つ。

でぃーえぬえー【DNA】

デオキシリボ核酸 (deoxyribonucleic acid) の略。アデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、チミン (T) という塩基、 デオキシリボースという糖、リン酸が(塩基)-(デオキシリボース)-(リン酸)という基本単位(ヌクレオチド)を作り、 それが鎖状につながったポリヌクレオチド(ヌクレオチドがたくさん並んでくっついたもの)が 2 本、水素結合という弱い結合で はしご状にらせん構造を作ったもの。塩基の水素結合はシトシン (C) とグアニン (G) 、アデニン (A) とチミン (T) でしか 結合しない。この二重らせん構造はワトソンとクリックが発見した。遺伝子の担い手となる物質で、ウイルスなどを除く生物全てが 共通して持っており、その塩基配列によって様々なタンパク質を作っている。塩基の順番は種や個体によっても異なり、それが個体の 持つ遺伝情報となる。 DNA 分子の幅は 2 nm (1 nm = 1,000,000,000 / 1 m) で長さは生物によって様々だが、ヒトの一つの細胞の DNA は約 2 m。真核生物(核が膜によって包まれている生き物:細菌などを除くほとんどの生物)の細胞内では、大部分が ヒストンというタンパク質と結合した状態で存在。DNA はミトコンドリア(細胞のエネルギーを作る器官)や 葉緑体(光合成を行う器官)にもわずかに含まれている。

とつぜんへんいせつ【突然変異説】

ド・フリースがダーウィンに対抗して立てた進化学説。植物の交雑実験を通して新種の植物が中間系を経ずに生まれるのを 観察してそれが進化の重要要因として '突然変異' と名付けた。生物界で議論を呼んだが扱った植物が非常に複雑な物であることが わかり、間違えであることが判明した。その後 '突然変異' という言葉はモーガンらのショウジョウバエの研究で 定義され直されて(ゲノムを構成する染色体や核酸分子の一部に起こる変化)、遺伝学では重要な考えとなった。

とらんすふぁーあーるえぬえー【tRNA】

運搬(転移)RNA とも言う。細胞内のタンパク質合成をする時、その材料となるアミノ酸をタンパク質合成工場であるリボソームに 運ぶ役割を持つ RNA。20 種類のアミノ酸に対して 1 つ以上の tRNA が対応しており全部で 40 から 60 種類存在する。tRNA は 広げるとクローバーのような形をしており、アミノ酸と結合する部分の反対側にはアンチコドン(mRNA が持っているアミノ酸を 決める暗号であるコドンと対となる配列を持った塩基配列)という塩基配列があり、リボソームに結合した mRAN のコドン (アミノ酸を決める暗号)を識別して、対応した tRNA が mRNA と結合する。

とらんすぽぞん【トランスポゾン】

ある DNA 分子から別の DNA 分子へ移動できるような遺伝子のこと。細菌、トウモロコシ、ショウジョウバエからヒトまで 広く存在している。生物進化に関与していると考えられている。

な行

は行

はいえんそうきゅうきん【肺炎双球菌】

肺炎と気管支炎の原因となる細菌で。グリフィスやアベリーは肺炎双球菌を使うことで、 形質転換(遺伝情報が他の個体に移ること)を起こす物質が DNA であることを突き止めた。

ばいち【培地】

実験室で植物や菌などを育てるときに使うもの。寒天培地などがあり、自然界における土のような役割をはたす。 また、培地のなかにどんな栄養素を入れるかなどが自由に調整できる。

ぱすだいじけん【パスダイ事件】

1998 年に英国のテレビ番組で遺伝子組換え(害虫耐性のためにレクチンをつくる遺伝子を組み込んだ)ジャガイモを ラットに食べさせたところ免疫低下などが見られたと報告し、世間を騒がせたロウェット研究所の博士。この報告の後、 世間に誤解を与えたとして博士は停職処分を受けた。問題となった実験はその後科学誌に不十分な点が多いという前提で 掲載された。この事件は遺伝仕組換え食品全体についての論争を起こすきっかけとなった。

ぱーてぃくるがんほう【パーティクルガン法】

導入したい有用遺伝子を直接細胞に入れる方法。目的遺伝子が組み込まれたプラスミドなどを金やタングステンなどの微粒子に 付着させ、高圧ガスなどで葉などの植物組織に撃ち込む。細胞壁が厚い植物体にも導入はできるが、ねらい打ちをしているのではなく たくさん撃ち込み、後でうまく導入されたものを選択して培養する。導入できる植物は多いが、導入される可能性が低いのが 難点である。

ばるくせん【バルク船】

穀物などを荷造りせずばらばらのまま積みこんで輸送する船。

ぴーしーあーる【PCR】

Polymerase Chain Reaction(合成酵素連鎖反応)の略。微量のサンプル DNA からある特定領域のコピーを短時間に大量に 作り出す技術。まず、サンプルの 2 本鎖 DNA に熱を加えて 1 本鎖にする。次に増やしたいと思う DNA の領域の両端にプライマーと いう短い塩基配列をつける。それを始点として分かれた DNA の 1 本鎖それぞれに新しい塩基が結合し、2 倍に増える。これが何度も 繰り返される。20 回の反応で 100 万個 (220) にその配列のコピーを得ることができる。これは医療現場での 遺伝病の診断や犯罪捜査の個人識別など様々な所で使用されている。

びーてぃこーん【Bt コーン】

害虫(アワノメイガの幼虫)の消化器官を破壊してしまう Bt タンパク質が作られるようにした遺伝子組換え作物。 これを食べると害虫は死んでしまう。この幼虫はトウモロコシ生育期間中に 2 回発生するため農家の大きな危害を与えている。 Bt タンパク質は Bt 菌(Bacillus thuringiensis という微生物)が生産し、鱗翅目(りんしもく:チョウやガ)昆虫に特異的に 作用する殺虫性タンパク質。アワノメイガの幼虫が Bt トウモロコシを食べると腸内の受容体にこのタンパク質が結合し、 腸管に穴をあけて殺してしまう。しかし、動物や植物、鱗翅目以外の昆虫には、このタンパク質が結合する受容体が 存在しないため害はない。また、ヒトの胃は酸性であるためそこで Bt タンパク質は分解されるため害はないとされる。

ひへいさけいおんしつ【非閉鎖系温室】

外部との空気の出入りが可能なコンクリート敷きで網を張るなどしたガラス温室。 ここでは、花粉や種子の性質、土壌微生物など影響などが調べられる。

ひょうじせいど【表示制度】

2001 年 4 月から JAS 法と食品衛生法により遺伝子組換え食品の表示義務制度が決められた。生産・流通段階を通じて 分別された非遺伝子組換え農産物(IP ハンドリングによって管理)を原料とする場合は表示不要であり『遺伝子組換えでない』等を 任意表示できる。遺伝子組換えが分別していない農作物を原料とする場合は『遺伝子組換え不分別』等の表示が義務づけられる。 遺伝子組換え農作物を原材料とする場合は『遺伝子組換え』等の表示が義務づけられる。実際は、組換えられた DNA もしくは それによって作られるタンパク質が存在しているのが前提にあるため表示が義務づけられる食品は 輸入される遺伝子組換え作物のうちの一割程だと言われている。

ひんしゅかいりょう【品種改良】

目的にあった品種を系統分離(交雑・選別を行い遺伝的に等しい個体群を作り出すこと)をして選別したのち、交雑をしたり、 突然変異をした個体を探し出したり(人為的に突然変異を起こさせる場合もある)することによって現在のものを改良すること。

ぷらいまー【プライマー】

DNA の合成反応をはじめさせる目印となるポリヌクレオチド鎖(ヌクレオチドがいくつも鎖状につながったもの)。

ぷらすみど【プラスミド】

核の中にある DNA とは独立した状態(核外)で存在しながらも、自己増殖によって細胞内で安定したまま次の世代に遺伝する 遺伝因子のこと。多くのプラスミドは環状二本鎖の DNA であるが、酵母など鎖状のものも見つかっている。プラスミドは細胞の 生存に必須のものではないが、その遺伝子によって性を決定する遺伝子(大腸菌)、薬剤耐性遺伝子などを持っている場合がある。 DNA を組換える実験で、他の生物の DNA の破片を組み込むための運び屋(ベクター)として広く利用されている。

ぷろもーたー【プロモーター】

DNA の中にある遺伝情報を mRNA に転写する際にその転写をはじめさせる目印となる DNA の領域。

へいさけいおんしつ【閉鎖系温室】

閉鎖されたガラス温室。水、空気、土などが外部に漏れないような構造になっている。外部との空気の交換の際には フィルターを通して漏れがないようにする。ここでは、導入遺伝子が確実に後世代に伝わるか、有害物質が生産されていないか などの遺伝子組換え作物の基本的な性質を調べる。

ぽりめらーぜ【ポリメラーゼ】

DNA ポリメラーゼ、RNA ポリメラーゼなどがあり、 DNA や RNA を合成するために働く酵素。 DNA の複製・修復、RNA の合成に関与する重要な酵素。


ま行

まーかーいでんし【マーカー遺伝子】

組換え作物の作成で、組換えられる作物に組換え遺伝子が導入されたかを確認するためにあらかじめ抗生物質に耐性を 持つような遺伝子を組み込んでおく。この確認のために導入された遺伝子をマーカー遺伝子と呼ぶ。導入されたかは その組換え体に抗生物質などを与えて生き残るか調べればよい。

みくろぐらふぃあ【ミクログラフィア】

17 世紀、ロバート・フックが自作の顕微鏡で様々な生物を観察して出版した『顕微鏡図誌』のこと。 この時代に生物学が発達した背景にはミクロの世界をのぞくことができる顕微鏡の発展がある。

めっせんじゃーあーるえぬえー【mRNA】

伝令 RNA とも言う。細胞の核内にある DNA の持つ遺伝情報を写し取り(転写)、タンパク質の合成工場であるリボソームへ 伝える役割をする RNA。mRNA の 3 個の連続した塩基はコドンと呼ばれておりその配列が一つのアミノ酸に対応している。

めんでるのほうそく【メンデルの法則】

メンデルが提唱した、遺伝現象に関する法則。メンデルが提唱した当時はかえりみられず死後 1900 年になってこれらの法則が 再発見されたときにまとめ上げられて、それが 'メンデルの法則' と今日まで言われている。一般には優性の法則、分離の法則、 独立の法則をいう。(1) 優性の法則は対立形質(マメの色に関しては緑色か黄色というのが対立形質)を持った親の間にできた子 (雑種第 1 代)には、対立形質の一方だけがあらわれ、他方はあらわれないという法則。雑種第 1 代に現れる形質を優性、 現れない形質を劣性という。(2) 分離の法則は生物が生殖細胞を作るときに対立遺伝子(それぞれの親から受け継いだ対立形質に 対する遺伝子)が分離してそれぞれ別々の配偶子(精子や卵など)に入って伝えられる法則。(3) 独立の法則は、2 組以上の 対立形質が異なった染色体に存在する場合は、そえぞれが独立に分離して自由な組み合わせに分配されるこという。 しかし、同じ染色体に存在しない場合はこの法則が成り立たないことがわかっている。

もにたりんぐけんさ【モニタリング検査】

市場に流れたものを観察し、検査すること。遺伝子組換え食品については安全性実審査の遺伝子組換え食品が国内に流入して いないか、表示が正しく行われているかを確認するため定期的に各検疫所や都道府県などが商品を買い取り検査している。

や行

ゆうよういでんし【有用遺伝子】

必要としている酵素などのタンパク質を作る遺伝子のこと。

ら行

りがーぜ【リガーゼ】

連結酵素。制限酵素によって特定の配列が切り取られた DNA 断片にリガーゼを働かせるとそれがのりのような働きをして 切断された断片同士を結びつけることができる。

りぼそーむあーるえぬえー【rRNA】

リボソームを構成する RNA。細胞内にある全 RNA の 80% を占める。リボソームは数種類の rRNA と 多数のリボソームタンパク質からなる雪だるまのような構造体。細胞内でタンパク質を合成(翻訳)する働きを持つ。

りんがーえき【リンガー液】

生き物の細胞中にある液体(組織液)と同じように調整した液体。ふつうの水に塩分やカルシウムなど様々なものをくわえて、 成分を似せている。手術の時などによく用いられる。

わ行

http://www.t-scitech.net/history/miraikan/gmo/reference.html